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戦争の勝者を裁く、国際戦犯法廷
おととい、クリントン大統領はギリシャでだいぶ激しい反米デモに遭っていたようだ。デモを行っていたのは、アメリカ軍やNATO軍のユーゴスラヴィアへの武力行使に抗議するグループで、首都アテネの市街地数か所で5000人以上が参加したという。参加者の一部は放火・商店破壊などをし、大統領が通る道路や泊まるホテル一帯は車も人も終日締め出され厳戒態勢がひかれた。それがまた不満で「アテネの道路は俺達の物だ」というプラカードも見られたが…。
こういった、コソボ介入へ疑念の目を向ける運動は、アメリカの国内でも行われている。その例のひとつが、介入の責任者に対し「人道に対する罪」や戦争犯罪を問う「国際戦争犯罪法廷」で、欧米自身の市民が開設し、精力的に資料集め・公聴会が続けられている。被告は、クリントン米大統領、ブレア英首相、シュレダー独首相や、NATO諸国の軍首脳。もちろん本物の裁判の効力は無く、被告出廷も無いが、NATOのやった事は本当に平和を取り戻す「正義の味方」の行動だったと言い切れるのか、を問い直す作業だ。
ユーゴ問題の戦犯を裁く場としては、国連が「旧ユーゴ国際戦犯法廷」という機関をハーグに設置している。しかし、国際戦争犯罪法廷を主催している、NYを拠点とする『国際行動センター』は「コソボでのセルビアの戦争犯罪を調査するためには、300人の調査官がNATO諸国によって加えられようとしている。ところが、コソボでのNATOの戦争犯罪を調査するための調査官は、一人も加えられていない」と指摘する。
戦争後の裁判では「勝った者が正義」になるのが歴史の常で、東京裁判など今までおそらく全てが"勝ち組"の主宰だった。今回の「旧ユーゴ国際戦犯法廷」は、国連という中立機関が主宰する点が新味だったのだが、言われてみれば確かに最初から悪役は一方に決まっており、結局アメリカ側の視点にべったりじゃないか、ということになる。ならばNATO側のチェックは我々市民がやりましょう、というのが、この法廷の趣旨だ。7月末のNY公聴会から始まり、現在各地の市民の招聘で欧米を巡回開催中だ。
この運動の中心人物は、ホワイトハウスでジョンソン大統領時代に本物の司法長官を務めたラムゼー・クラーク氏。この人は32年前、アメリカで情報自由法が施行された時の長官で、施行の際こうコメントしている。「もし政府が真に人民の人民による人民のためのものであるなら、人民は政府の活動の詳細を知っていなければならない。秘密ほど民主主義を弱めるものはない」彼はこの信念に基づき、23項目の調査を進めている。
例えば...
| ・ | 国民の生活に必要な病院、発電所、住宅地、橋、浄水場などを攻撃目標とし、破壊したことに関する調査 |
| ・ | 劣化ウラン弾など、大量殺傷能力をもち禁止されている兵器の使用に関する証言 |
| ・ | KLA民兵に資金と武器を提供し、同じ国民同士の殺害を促すという組織的政策に関する調査 |
| ・ | 軍事的および政治的目標に対する社会の支持を動員するため、マスコミによる報道を組織的に操縦、統制、および制限したことに関する調査 |
……など。
具体的にどんなことを調べているのかというと、
| ・ | 指導者たちの、この戦争の理由を述べた公式声明の言い分を再検証 |
| ・ | NATOの最後通告として、空爆開始のきっかけとなったランブイエ合意を入念チェック |
| ・ | この戦争で利益を得るのは誰か、この地域の資源を新たに支配することになるのは誰か、の分析 |
…などだ。
民間人だから情報を集めるのに困難もあるが、インターネットやeメールを駆使して、世界中の関係者から公開で証拠集めを行い、目撃証言、医師、科学者、弁護士による専門的証言など、既にかなりの数のグループや個人から大量の情報が寄せられているそうだ。新しい時代の運動スタイルである。
※文中の情報は、全て執筆時点(冒頭記載)のものです。